松本市医師会館(長野県松本市)が竣工しました。
松本市医師会、検査健診センター、松本看護専門学校が入る、鉄骨造3階建の建物です。
2階検査部門には、PCR検査を行う、細菌・PCR検査室が設けられています。
今日、PCR検査は広く一般に知られるようになりましたが、設計時は新型コロナウィルス感染症が蔓延する前であり、検査スタッフの方々や医療機器メーカーへのヒアリング等を重ねる中で、私たちもPCR検査への知識を深めることができました。
PCRとはPolymerase Chain Reactionの略で、ポリメラーゼ連鎖反応を意味します。
ポリメラーゼは私たちの細胞の中で遺伝子(DNAまたはRNA)が増幅するときに働く酵素の名前です。ウイルスはとても小さいので、そのままでは通常の検査法をすり抜けてしまいますが、PCRでは特定のウイルスの遺伝子の一部を大量に複製させることによって、ウイルスの存在を検知することができます。
PCR検査室は、その実験工程により実験場所をエリア1~3の3つのエリアに限定します。
・エリア1では、通常、試薬類を扱い、陽圧のクリーンベンチ内で作業を実施します。
・エリア2では, 生物試料からのDNAまたはRNA抽出を行い安全キャビネットを用います。
・エリア3では、PCRを実施し, 増幅されたDNAの検出を実施します。
通常の実験室であれば特別な環境は不要となりますが、異常な増幅産物が検査試料に
混入しないようにするためエリア1、エリア2とは別のエリアにする必要があります。
また、検査スタッフの安全確保と検体の相互汚染防止のため、PCR検査室を構築するには、空調・排気設備などに特別な配慮が欠かせません。
今回は、3つすべてのエリアを別室に分け、安全キャビネットや各排気FAN、給気FANを連動させ、エリア3、エリア1、エリア2の順に室内を陰圧に保つ計画としています。
DNA抽出が行われる安全キャビネットが配置されたエリア2が最も陰圧となります。
この建物は、健康診断等で一般の方々にも広く利用されます。
多くの皆様に大切に利用していただける建物となれば幸いです。
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